導入|ChatGPTで「絵本を作る」はどこまで現実的なのか
「子ども向けの絵本を作ってみたい。でも、文章を書くのも、絵を描くのも苦手……」
以前なら、こうした場合は児童文学の作家、編集者、イラストレーター、デザイナーなど、複数の専門家に依頼する必要がありました。
ところが現在は、生成AIを使うことで、その一部を個人でも進められるようになっています。
特にChatGPTを使うと、物語の企画、登場人物の設定、ページごとの文章、挿絵の指示、タイトル、表紙案、紹介文、出版準備まで、一連の作業を整理できます。
もちろん、「ボタンを押せばプロが作った絵本が完成する」という話ではありません。AIが作った文章や画像には修正が必要ですし、子ども向けの作品なら、内容が年齢に合っているか、安全な表現になっているかも人間が確認する必要があります。
それでも、これまで「絵本を作る」という発想すらなかった個人が、自分のアイデアを1冊の作品にまとめられるようになったことは大きな変化です。
この記事では、ChatGPTを単なる文章生成ツールとしてではなく、絵本制作のアシスタントとして使う方法を紹介します。
対象としているのは、次のような人です。
- 子ども向けのオリジナル絵本を作ってみたい人
- AIを使った創作に興味がある人
- 自分の子どもや孫のために物語を作りたい人
- 絵本制作を小さく始めてみたい人
- AI画像生成と文章生成を組み合わせてみたい人
- 将来的に電子書籍や自費出版にも挑戦したい人
ポイントは、最初から「完成品を作らせる」のではなく、工程を8段階くらいに分けることです。

ChatGPTが絵本制作で役立つシーン
絵本制作で意外と時間がかかるのは、文章そのものだけではありません。
たとえば「森に住んでいる小さな動物の話を書きたい」と思いついたとしても、そこから、
主人公は誰なのか
何が起きるのか
どこで話が転換するのか
最後に何が変わるのか
各ページには何を書くのか
どんな絵にするのか
まで決める必要があります。
ここを一つずつ考えていると、思った以上に時間がかかります。
ChatGPTを使うメリットは、アイデアを具体的な制作工程に落とし込めることです。
たとえば、
「5歳くらいの子ども向けで、夜になると眠れない小さなキツネの話」
という程度のアイデアからでも、登場人物、舞台、物語の流れ、ページ構成などを整理できます。
さらに、文章だけではなく「このページにはどんな絵が必要か」というところまで考えられます。
絵本制作を分解すると分かりやすい
一般的な絵本制作を大きく分けると、次のようになります。
| 工程 | 人間が考えること | AIに任せやすい部分 |
|---|---|---|
| 企画 | 誰に何を伝えるか | アイデア整理 |
| 構成 | 物語の流れ | ストーリーボード |
| キャラクター | 性格・外見 | キャラクター設定 |
| 原稿 | ページごとの文章 | 初稿作成 |
| 絵 | 構図・雰囲気 | 画像生成用プロンプト |
| 推敲 | 読みやすさ | 表現の改善 |
| タイトル | 読者への訴求 | 候補作成 |
| 出版準備 | サイズ・形式など | チェックリスト化 |
ここで重要なのは、AIに任せる部分と人間が判断する部分を分けることです。
「全部AIに任せる」よりも、「AIに大量の案を出してもらい、人間が選ぶ」ほうが、最終的な作品は作りやすくなります。
8段階で作る「オリジナル絵本」の制作フロー
ここからが実際の作業です。
一度に「32ページの絵本を全部作って」と指示することもできますが、個人的にはあまりおすすめしません。
長い指示を一度に処理させると、途中で設定が変わったり、キャラクターの性格がぶれたりすることがあります。
そこで、次の8段階に分けます。
1.まず「ストーリーボード」を作る
最初に作るのは完成原稿ではありません。
絵本全体の設計図です。
例えば、次のような指示から始めます。
あなたは児童文学作家兼絵本編集者です。5〜7歳の子ども向け絵本の全体構成を作ってください。目的:・子どもが最後まで楽しめる・難しい言葉を避ける・主人公が小さな問題を乗り越える・最後に温かい気持ちになる32ページの絵本を想定し、見開き単位でストーリーを構成してください。各ページについて、・起きる出来事・主人公の感情・短い文章の方向性・必要な挿絵を整理してください。私のアイデア:「夜になると眠れない小さなキツネが、森の中で不思議な光を見つける話」
ここで大事なのは、いきなり美しい文章を書かせないことです。
まず「何が起きる話なのか」を決めます。
絵本では、ページをめくったときの変化も重要です。
例えば、
問題 → 発見 → 期待 → 失敗 → 新しい発見 → 解決 → 余韻
という流れを作っておけば、単なる出来事の羅列になりにくくなります。
2.キャラクター設定を「キャラクター・バイブル」にする

絵本制作で意外と難しいのが、キャラクターの一貫性です。
最初のページでは「茶色い小さなキツネ」だったのに、途中から耳の形や服装が変わってしまう。
AI画像生成では、このような問題が起こることがあります。
そこで、最初にキャラクターの設定を作ります。
絵本の主人公となるキツネのキャラクター設定資料を作ってください。以下を含めてください。・名前・年齢・体格・毛の色・耳の形・目の色・服装・表情の特徴・性格・好きなもの・苦手なもの・口癖・物語の最後で変化する部分特に外見については、後から画像生成プロンプトにそのまま利用できるように具体的にしてください。
さらに、脇役も2人程度作っておくと便利です。
ただし、登場人物を増やしすぎる必要はありません。
子ども向けの短い絵本なら、主人公、友達、問題を起こす存在など、役割を整理したほうが物語が分かりやすくなります。
3.ページごとの原稿を作る
ストーリーの設計ができたら、ようやく本文を書きます。
ここでは「小説のような文章」を求めないことが重要です。
絵本は、文章だけで情景を説明するものではありません。
絵と文章が一緒になって物語を作るものだからです。
例えば、
キツネは大きな森の中を歩きました。そこにはたくさんの木があり、空には星があり、風が吹いていました。
と全部説明するより、
そっと、そっと。
キツネは夜の森を歩きました。
くらいにして、森の広がりは絵に任せる方法もあります。
ChatGPTには次のように指示できます。
先ほど作ったストーリーボードをもとに、32ページの絵本本文を書いてください。対象は5〜7歳です。条件:・1ページあたり短い文章にする・声に出して読んだときに自然なリズムにする・難しい漢字や抽象的な表現を避ける・絵で説明できる部分は文章で説明しすぎない・同じ言葉を適度に繰り返す・最後は安心感のある終わり方にする各ページに「本文」「そのページで伝える感情」を付けてください。
ここまでできると、絵本らしい形がかなり見えてきます。
4.ページごとの「挿絵プロンプト」を作る

次はイラストです。
ここではChatGPTを美術監督のように使います。
重要なのは、ページごとにバラバラの指示を作らないことです。
例えば主人公が、
茶色の毛、小さな体、白い胸元、青いスカーフ
という設定なら、画像生成用の指示でも、この特徴を毎回維持します。
あなたは絵本のアートディレクターです。先ほどの32ページの原稿について、各ページの挿絵生成用プロンプトを作ってください。各プロンプトには以下を含めてください。・場所・時間帯・主人公のポーズ・表情・周囲の環境・重要な小道具・カメラアングル・構図・感情・光の雰囲気主人公の外見は、キャラクター設定資料の内容を毎回正確に維持してください。ページごとに違いを出しながらも、絵本全体で同じ世界観になるようにしてください。
ここで「同じキャラクターを毎回同じように描く」という問題が出てきます。
現在の画像生成AIは以前より大幅に改善していますが、完全に同一のキャラクターを保証できるわけではありません。
そのため、キャラクターの特徴を固定した「共通設定」を用意しておくことが重要です。
5.「朗読したときに自然か」をチェックする

絵本は、黙読する文章とは少し違います。
大人が子どもに読み聞かせるケースが多いため、文章を声に出して確認することが重要です。
例えば、
そのため、彼は森の奥へと向かうことにしました。
という文章より、
「行ってみよう」
キツネは森の奥へ走りました。
のほうが読み聞かせでは自然です。
ChatGPTに編集を依頼するときも、単に「文章をきれいにして」と指示するより、
この原稿を読み聞かせ向けに編集してください。・声に出したときのリズム・短い文章と長い文章のバランス・繰り返し表現・子どもが予測できる言葉・ページをめくる直前の余韻を意識してください。変更した箇所は、「変更前」「変更後」の2列で示してください。
とすると、修正の理由も確認しやすくなります。

6.タイトルと表紙を考える
完成した物語には、タイトルも必要です。
ここでありがちな失敗が、「作者が好きなタイトル」と「読者が内容を想像できるタイトル」が一致しているとは限らないことです。
例えば、
「夜の森」
だけでは少し抽象的です。
一方、
「ねむれないキツネと夜のひかり」
なら、主人公と物語のテーマが少し分かります。
ChatGPTには、
この絵本について、子どもにも覚えやすく、保護者が内容を想像しやすいタイトルを10案考えてください。その中から特に良い3案を選び、・タイトル・タイトルの印象・想定読者・表紙の構図・主人公のポーズ・背景・文字の雰囲気まで提案してください。
と頼めます。
タイトルは単に「面白そう」だけではなく、どんな読者にどんな体験を届ける本なのかを考えて決めるとよいでしょう。
7.封面ではなく「裏表紙」まで考える
電子書籍や紙の本として公開するなら、本文だけ完成させても終わりではありません。
紹介文も必要です。
例えば、
この絵本の裏表紙に掲載する紹介文を作ってください。条件:・物語の結末は書かない・最初の2〜3行で興味を引く・保護者にも内容が伝わる・子ども向けの温かい雰囲気を残す・対象年齢を自然に示す短い版と、少し詳しい版の2種類を作ってください。
このようにすると、作品紹介として使える文章を準備できます。
8.最後に「出版準備」のチェックリストを作る
最後の工程は意外と地味ですが、実際に公開するなら重要です。
例えば、
- 本のサイズ
- ページ数
- 表紙
- 本文データ
- 画像解像度
- ファイル形式
- タイトル
- 著者名
- 説明文
- キーワード
- カテゴリー
- 著作権表示
などを確認します。
AIに次のようなチェックリストを作らせても便利です。
この絵本を電子書籍またはオンデマンド出版する前に確認すべき項目を、企画、本文、画像、データ、権利、販売ページ、公開後の確認に分けて整理してください。初心者が忘れやすい項目には「注意」と付けてください。
これなら「作品は完成したのに、公開用データが足りない」という事態を防ぎやすくなります。
実際に作るなら「一気に完成させない」のがコツ
ここまで読むと、
「8段階もあるのか」
と思うかもしれません。
しかし、実際にはこの分け方のほうが楽です。
例えば次のような流れです。

1日目
企画 → ストーリーボード → キャラクター設定
2日目
本文 → 読み聞かせ用の推敲
3日目
挿絵の構成 → 画像生成 → 修正
4日目
表紙 → タイトル → 紹介文 → 最終チェック
もちろん、作品の規模によって必要な時間は変わります。
大切なのは、「AIに全部作らせる」という考え方ではなく、人間が編集長になってAIを制作スタッフとして使うことです。
AIで絵本を作るメリット
制作コストを大きく抑えられる
従来の絵本制作では、文章、イラスト、編集、デザインなど、それぞれに専門的なスキルが必要でした。
AIを利用すると、少なくとも「最初の試作品を作る」までのハードルはかなり下がります。
特に個人で試す場合、この違いは大きいでしょう。
アイデアをすぐ形にできる
「こんな話を書いてみたい」と思ったとき、以前ならノートにアイデアを書いて終わることもありました。
AIなら、
アイデア → 構成 → キャラクター → 原稿 → 絵の指示
まで、一気に具体化できます。
修正を繰り返しやすい
「もう少し小さい子向けにしたい」
「主人公をもっと臆病にしたい」
「最後をもっと温かくしたい」
といった修正も比較的簡単です。
一方で、AI絵本にはデメリットもある
AIを使えばすべて解決するわけではありません。
特に注意したいのが作品の個性です。
AIにありがちな表現だけを組み合わせると、文章も絵も「どこかで見たような作品」になってしまうことがあります。
また、画像生成ではページごとにキャラクターの顔や服装が変わる問題もあります。
さらに、AIが生成した情報が必ず正しいとは限りません。
歴史、科学、文化などをテーマにする場合は、必ず人間が確認する必要があります。
ChatGPTだけで作る場合と専門家に依頼する場合の違い
| 項目 | AI中心 | 個人クリエイター | 専門チーム |
|---|---|---|---|
| 初期コスト | 低め | 中程度 | 高め |
| 制作速度 | 速い | 普通 | 内容による |
| 修正 | 比較的簡単 | 相談が必要 | 工程による |
| 絵の個性 | 工夫が必要 | 高い | 高い |
| 品質管理 | 自分で必要 | 依頼先による | 体制を組みやすい |
| オリジナリティ | 指示次第 | 高い | 高い |
| 初心者の始めやすさ | 高い | 中程度 | 低め |
ここで「AIが一番優れている」と考える必要はありません。
試作品を作るならAI、作品としての完成度を追求するなら専門家と組み合わせるという考え方が現実的です。
初心者がよくハマるポイント

1.最初から32ページ全部を書かせる
これはかなりありがちな失敗です。
最初に全ページを生成すると、途中から設定が崩れることがあります。
まず構成を作り、その後に本文を作るほうが管理しやすくなります。
2.キャラクター設定を残していない
画像を何枚も生成するなら、キャラクター設定は必ず保存しておきましょう。
特に、
- 毛色
- 服装
- 目
- 耳
- 身長
- 持ち物
- 表情
などは重要です。
3.文章を増やしすぎる
絵本なのに説明文が長くなると、絵の意味が薄くなります。
「文章で説明すること」と「絵で見せること」を分ける意識が必要です。
4.AIの文章をそのまま使う
生成された文章は「完成原稿」ではなく「初稿」と考えたほうが安全です。
実際に声に出して読んでみると、文章の不自然さに気づくことがあります。
5.出版ルールを確認しない
電子書籍や紙の本として販売する場合、利用するサービスによってファイル形式や画像、権利関係などの条件が異なります。
「AIで作ったから、そのまま販売できる」と考えるのではなく、利用するサービスの最新ルールを公開前に確認することが重要です。
AI絵本制作で特に重要なのは「人間の編集」
ここまでの話をまとめると、ChatGPTは絵本を作るうえでかなり便利な道具です。
ただし、AIが得意なのは「案を大量に出すこと」や「文章を整理すること」です。
一方で、
この話は本当に面白いのか?
このキャラクターを子どもは好きになるのか?
このページでページをめくりたくなるのか?
この結末に納得できるのか?
という最終判断は、人間が行ったほうがいいでしょう。
特に子ども向けの作品では、単に文章がきれいであればいいわけではありません。
読み聞かせる親と、それを聞く子どもの両方が楽しめるか。
ここを意識すると、AIが作った文章をそのまま並べた作品とはかなり違ってきます。

まとめ|ChatGPTは「絵本作家の代わり」ではなく制作パートナーとして使う
ChatGPTを利用すれば、個人でも絵本制作に挑戦しやすくなりました。
今回紹介した方法では、
- ストーリーボードを作る
- キャラクターを設定する
- ページごとの原稿を書く
- 挿絵プロンプトを作る
- 読み聞かせ向けに推敲する
- タイトルと表紙を考える
- 裏表紙の紹介文を作る
- 出版準備を確認する
という流れで、アイデアから公開準備まで整理できます。
特におすすめしたいのは、「最初から完璧な1冊を作ろうとしない」ことです。
まずは8〜10ページ程度の短い作品を試し、キャラクターの一貫性、文章の長さ、画像の雰囲気などを確認してみる。その経験をもとに32ページの作品へ広げたほうが、途中で挫折しにくくなります。
AIによって絵本制作のハードルは確実に下がりました。
だからこそ、これから大切になるのは「AIを使えるか」だけではありません。
どんな物語を作りたいのか、誰に読んでもらいたいのか、そして最後にどこを人間が直すのか。
この3つを自分で決められる人ほど、AIをうまく制作パートナーとして活用できるはずです。
子どもの頃に自分で考えた物語を本にしてみたかった人にとっても、今は以前よりずっと気軽に最初の1冊を作れる時代になりました。まずは小さな物語から試してみるのが、いちばん現実的な始め方です。


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